前回までの話
基本構造
RX-78-2の驚異的な万能性は、
当時としては非常に画期的だった。
宇宙戦闘や重力下、
さらには自由落下状態での戦闘に対して
無改装で対応できるだけでなく、
大気圏突入も特別なオプションなしで
可能とされていた。
さらには、海中での戦闘さえも理論上は
可能だったという説もある。
この適応力は、他のMSとは一線を画していた。
特定の環境に最適化するためには
改装が必要だったが、特筆すべきは、
素の状態でほぼすべての戦闘環境に
対応できたことだ。
これは、いわゆる「サバイバリティ」として、
RX-78-2の突出した強みとされる。
この高い適応性を支えたのが、
機体の高度な整備性だった。
RX-78-2は各部が独立した
モジュールとして設計されており、
各ユニットの交換が容易であった。
そのため、
迅速なメンテナンスが可能だったのだ。
実戦では、ホワイトベースの乗員たちは
素人同然の状態でRX-78-2を運用していた
にも関わらず、その高い整備性のおかげで
戦闘に耐えることができた。
無論、交換部品の供給が十分であることが
前提ではあったが、実際にWB部隊は
他の部隊と比べても比較的恵まれた
補給体制にあった。
この柔軟性と整備性が、
RX-78-2の伝説的な性能を支える
大きな要因となっていたのである。
容易なメンテナンスと工夫
RX-78-2のメンテナンス性は、
パーツの消耗度によってA級からD級に
分類されることで高められていた。
D級消耗パーツは、たとえ交換せずとも
運用に大きな支障はないが、
信頼性が低下するという特徴があった。
例えば、
ビーム・サーベルの粒子収束部は、
このD級パーツに該当し
細かなパーツの交換が
常に必要というわけではなかった。
RX-78-2はMS同士の接近戦を想定して
開発されていたため、外見上は
非常にシンプルで無駄のないデザイン。
しかし、
内部には多くの可動機構が引き込まれており、
耐衝撃性を高めるための
装甲によって覆われていた。
当時、
まだMS同士の格闘戦が行われたことがなく、
複雑な外観がかえって格闘戦では
不利になると考えられていたためだ。
実際、機体表面がフラットであることは、
格闘戦時の損傷を減らすという仮説に
基づいていたが、後に戦闘データが
蓄積されるにつれて、この考えは否定された。
表面がフラットであっても、格闘戦での
損傷率が顕著に減少するわけではなかったことが
明らかになる。
むしろ可動部分や外部装備の柔軟性が
重要視されるようになった。
このような初期設計の工夫と
メンテナンスの容易さは、
RX-78-2が戦場で実戦投入される際の
運用効率を飛躍的に向上させた一因となた。
コンセプト
RX-78-2は、試作機としての
トライアルを目的としていただけでなく、
実戦テストも考慮されていた。
最前線で戦う秘密兵器
そのため、公国軍にその姿が露見し、
情報が漏洩する可能性にも配慮がなされ、
外観から機構や性能を推測されないよう
徹底的に工夫が施されていた。
これは
「最前線で戦う可能性がある秘密兵器」という、
矛盾したコンセプトを持つ機体として、
極めて高度な要求を満たすためだった。
しかし、
偶然にもRX-78-2は実際に最前線に投入され、
戦闘データがジオン公国軍によって
解析されることとなる。
地球方面軍司令官ガルマ・ザビ大佐は、
サイド7から地球へとRX-78-2を追撃してきた
シャア・アズナブル少佐(当時)
とその部隊から得たデータをもとに、
RX-78-2の性能を分析しようと試みた。
この推測データは、
ザクを基準にしたものであり、
キシリア・ザビ少将の元へ報告されたとされる。
しかし、実際のRX-78-2の性能は
その推測を大きく上回るものであったという。
一説では、キシリア少将自身が
腹心の部下マ・クベ少佐(当時)とともに、
MAX-03アッザムで交戦した際、
ガルマ大佐からの報告以上の性能を発揮する
RX-78-2を目の当たりにし、驚愕したとされる。
もしこのエピソードが事実であるならば、
RX-78-2に課せられた矛盾した要求を、
開発チームは見事にクリアしていたと言えるだろう。
最前線で戦い、
敵に性能を知られない「秘密兵器」としてのRX-78-2。
この二重の役割を担いながら、
その圧倒的な性能は後に伝説となる。
装甲
RX-78-2の機体が平面で
構成されているのは、セミ・モノコック方式の
装甲設計によるものである。
この方式により、
被弾した際の装甲の交換が容易になり、
戦場でのメンテナンス性が大幅に向上した。
この設計思想は後にRGM-79ジムにも引き継がれ、
ジムの生産性を高める要因となった。
また、RX-78-2の装甲には
ルナ・チタニウム合金が採用されている。
この合金は、
他のRXシリーズにも使用され、
RX-75やRX-77も
同様にザク・マシンガンの直撃に耐える
耐弾性能を持っていた。
さらに、この合金は装甲だけでなく、
機体の構造材にも使用され、
機体の軽量化にも大きく貢献している。
RX-78-2のスラスター推力、
ジェネレーター出力と重量比のバランスが
非常に優れているのも、
このルナ・チタニウム合金の効果が大きい。
しかし、この合金は非常に高価であり、
希少金属を多量に使用することや、
製造に高度な技術が必要なため、
機体の製造コストを著しく押し上げる要因となった。
簡易量産機であるRGM-79ジムでは、
コスト削減のためにルナ・チタニウム合金の装甲や
構造材としての採用は見送られている。
関節駆動
RX-78-2は公国軍のザク以上に
人間に近いプロポーションを実現している。
これは開発スタッフが目指した
「擬人化」の到達点だと言われている。
頭部の形状だけでなく、人間の動きを
完全に再現するという執拗なこだわりは、
格闘戦を意識した機体設計に根差している。
その背景には、
ザクを超える機体を作りたいという敵愾心があり、
より高度な擬人化が求められた。
RX-78-2の関節駆動に関しては、
公国軍のザクが流体パルス方式を
採用していたのに対し、モーター方式が採用された。
モーター方式は従来、
重量や体積の問題で敬遠されていたが、
RX-78-2では新型のフィールド・モーターを採用し、
その問題を克服した。
このモーターは
ミノフスキー物理学を応用しており、
連邦軍技術部とサムソニ・シム社の
共同開発によって生み出されたものだ。
フィールド・モーターは
主要な関節だけでなく、
マニピュレーターの各関節にも
同様に採用され、極めて精密な動きを可能とした。
RX-78-2の脚部は、
宇宙空間でのAMBAC機動に加え、
重力下での支えや移動ユニットとしても
使用されるため、最も酷使される部位である。
そのため、
駆動用の独立したジェネレーター(NC-3M型)が
内蔵され、特に重力下での驚異的な走破性を
発揮できるよう設計されていた。
これにより、
格闘戦や複雑な機動にも対応可能な高い性能を誇る。
RX-78-2に搭載された
フィールド・モーターは、
以後の連邦軍MSにおける基本的な
関節駆動方式となり、その技術は
次世代機へと受け継がれていくこととなる。
コア・ブロック・システム
RXシリーズはトライアル機として、
戦闘データの収集が最優先とされ、
その高いサバイバリティが特徴だった。
だが、万が一機体が破損し、
帰投不可能となった場合に備え、
RXシリーズには画期的な
脱出システムが導入された。
それが「コア・ブロック・システム」である。
このシステムでは、
小型戦闘機コア・ファイターをモジュール化し、
コクピットとして機能させることで、
パイロットの脱出を可能にした。
単にパイロットを救出するだけでなく、
コクピットに搭載された
教育型コンピュータの戦闘データも
回収できる仕組みとなっている。
RXシリーズに搭載された
このコンピュータは、戦闘経験を蓄積し、
パイロットの成長とともに
機体の管制能力を向上させるという、
自己進化型のシステムだった。
RX-78-2の頭部には
コ・プロセッサーフレームが搭載されており、
これも教育型コンピュータ同様に
光集積回路(GMO)を使用して、
ミノフスキー粒子による誤作動を防止。
頭部のコ・プロセッサーフレームは、
教育型コンピュータの機能を代替することができ、
これによってコア・ブロック内のコンピュータに
かかる負荷を軽減することが可能だったとされる。
RX-78-2のコア・ブロック・システムは、
戦闘時におけるパイロットの生存率を
高めるだけでなく、機体の戦闘データの
確実な回収をも可能にする、
非常に先進的な脱出システムであった。
ジェネレーター
RX-78-2の動力源は、
タキム社製の熱核反応炉を搭載しており、
合計で7基にも達する。
その総出力は当時の航宙艦艇をも凌駕し、
公国軍のザクと比較して約5倍(または4倍)の
エネルギー・ゲインを誇った。
メインとなるのは、
コア・ファイターに搭載されている
2基のNC-3型核融合ジェネレーターであり、
これがRX-78-2の推進力と
エネルギー供給を担っていた。
コア・ファイターとして使用される際には、
NC-3型ジェネレーターが推進装置として機能し、
また、RX-78-2本体に装備された際には、
背部ランドセルに結ばれた
メイン・スラスターの燃焼に利用される。
胸部に設置された特徴的なダクトは、
このジェネレーターの冷却を目的としており、
効率的な熱管理が可能だった。
RX-78-2には背部ランドセル内に
2基のタキムNC-5型ジェネレーターが
サブ・ジェネレーターとして装備されている。
ビーム・サーベルやビーム・ライフルなどの
ビーム兵器へのエネルギー供給を行っていた。
しかし、一年戦争当時の技術では
エネルギーCAPシステムのチャージは難しく、
ビーム兵器を継続的に
稼働させることはできなかった。
これらのジェネレーターは
ビーム兵器のアイドリングや
短時間の稼働に用いられる程度だった。
腰部にはNC-7型ジェネレーターが
追加装備されており、
これは主にビーム・ライフルの動作に
不足するエネルギーを補うための処置とされている。
一部の説では、このジェネレーターの追加により
膝に冷却システムが設置されたとも
いわれているが、確認はされていない。
また、胴部の左右にある突起物が
「動力ボックス」としてジェネレーターと
考えられていたが、実際にはジェネレーターではなく、
姿勢制御用の「サブ・スタンス・コントロール・システム」
であるとされる説が一般的である。
脚部には、歩行ユニットを駆動するための
NC-3M型ジェネレーターが左右に装備され、
重力下での機体の移動を支えた。
これらの各ジェネレーターは、
RX-78-2の各ユニットや兵装にエネルギーを供給し、
驚異的な性能を発揮する要となっていた。
胸部のダクトは、
冷却用の大気を吸入・排出するためのものであり、
高出力の維持と機体の安定稼働を可能にする
重要な要素である。
大気圏突入能力
RX-78-2は、
単独での大気圏突入を実現したことで
知られており、その性能はいまだに
驚異的とされています。
MSZ-006 Zガンダムが
ウェイブライダー形態に変形することで
大気圏突入を行ったように、
他のガンダム系MSでも大気圏突入の手段は
存在していますが、RX-78の方法は
まったく異なるものでした。
現代のMSが大気圏突入を行う際には、
一般的に「バリュート・システム」が使用されます。
このシステムは、
耐熱性と難燃性を持つすり鉢状の風船を展開し、
ロケットノズルで機体を減速しながら突入する方式です。
この風船は耐熱繊維で作られており、
摩擦熱でプラズマ化した大気と
絶縁する効果を持つため、機体を保護します。
RX-78-2はこのようなシステムを使うことなく、
大気圏突入を果たしました。
その技術的な詳細は明らかにされていないものの、
主にRX-78-2の高度な機体冷却システムによって
可能になったと考えられています。
『アムロ・レイ 撃墜王の真実』によると、
アムロはシールドを正面に構え、
その背後に機体を隠す形で大気圏突入を
行ったとされています。
シールド自体は特別な冷却装置を持たないため、
機体の冷却ガスが噴出され、
周囲に絶縁層が形成されたとされます。
これにより、アムロは姿勢制御を行い、
機体を絶縁層内に収め、突入を成功させたと推測される。
RX-78-2の装甲は非常に高い耐熱性能を持ち、
表面温度が4000度に達する状況でも
耐えたという説があります。
このデータは、MAX-03アッザムとの戦闘で
得られたもので、RX-78-2は冷却機能を駆使して
この高温に耐えました。
この性能が、大気圏突入時のプラズマ化した大気に
対応可能であった理由とされています。
一部の専門家は、RX-78-2が使用した
冷却ガスは予備的なもので、実際には耐熱フィルムを
展開していたという説も提唱しています。
このフィルムは、蒸発時に高い熱吸収力を発揮し、
機体への熱侵入を最小限に抑えたというものです。
しかし、このフィルムを展開することが
現実的かどうかには疑問が残ります。
さらに、RX-78-2が大気圏突入時に減速せず、
直接着地する能力を持っていなかったことから、
この機体の大気圏突入能力には制約があると
指摘されています。
アムロ・レイが成功した大気圏突入は、
ホワイトベース(WB)との連携があったため、
無事に回収されましたが、連携艦がない場合には
コア・ファイターのみが大気圏突入を行うという
見方もあります。
このため、RX-78-2の大気圏突入能力は、
実際にはコア・ファイターの脱出機能に
依存している可能性があり、運用面から見ると、
この方式は効率的とは言えません。
しかし、試作機としての
高価なトライアル機であることから、
コストを度外視した仕様であった。
頭部
RX-78-2の頭部には、
頭頂部にメイン・カメラ、
後頭部にリア・カメラ、
そして一対のデュアル・カメラが
装備されています。
特にデュアル・カメラは
RX-78-2の擬人化を象徴するものであり、
ガンダム系MSの外見上の最大の特徴です。
しかし、注意すべきは、
RX-78-2のメイン・カメラが
「双眼」に相当する部位には存在せず、
頭頂部の突起に設けられている点です。
これに対して公国系MSでは、
メイン・カメラが顔の部位にある
「単眼」であることが一般的です。
MS-06Kザクキャノンのように、
頭頂部に補助カメラが備えられた例もありますが、
メイン・カメラが単眼であるという
設計は変わりません。
RX-78-2のこの設計は、
RX-77がメイン・カメラを
顔に配置していたこととは大きく異なり、
技術的な発想の転換であると言えます。
デュアル・カメラは、
照準精度を向上させるだけでなく、
対象物の精密な測定を可能にするものでした。
このカメラの構造は
簡易量産型のRGM-79にも引き継がれており、
性能的な差異はほとんどありません。
デュアル・カメラの採用については、
カバー素材の透過率が低かったため、
2つのカメラを1つのカバーで
覆えなかったためという説もあります。
また、擬人化を強く志向した結果とも
言われていますが、真相は明らかではありません。
RX-78-2の頭部には、
これ以外にも無数の補助カメラが設置されており、
コクピットのモニターに映し出される映像は、
光学カメラの映像だけでなく、
補助カメラやセンサーから得られる情報を
統合・処理したものです。
さらに、頭部カメラは光学映像だけでなく、
電磁波帯のセンサーとしても機能していましたが、
ミノフスキー粒子散布下では性能が
大幅に低下してしまいます。
それでも、トライアル機としては
重要な装備であり、連邦軍のMS開発の遅れを
補うためにも、様々なセンサーが試験的に
搭載されました。
デュアル・カメラに加えて、
RX-78-2の頭部を特徴づけるのが
無段階方位アンテナ(マルチブレード・アンテナ)です。
このアンテナは、
スーズ社製の「スーズ79タイプ」アンテナが
採用されており、ミノフスキー粒子による干渉を
防ぐために、多重の防護装置や光集積回路が
リンクに使用されています。
感想
コア・ファイターが意外に高性能。
ガンダムのメインカメラが、頭頂部の突起部分。
目に当たるところは、メインカメラじゃない。
コスト度外視の、昨日盛り盛りの試験機。
父さんが夢中になるわけだ。
だって、思い立ったこと全てやれるんだから。
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